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湖国と文化 編集長エッセイ-編集長 月記-

劇団四季 浅利慶太さん逝去

演劇界の巨匠・劇団四季の浅利慶太さんが7月13日、85歳で逝去された。「キャッツ」「オペラ座の怪人」のような大型作品を日本でもロングランさせたミュージカルの第一人者で、新聞各紙を見てもほぼ同じような評価や扱いだったが、1990年代から2000年にかけて新聞記者としてまた演劇ファンとして浅利氏と接した一人として訃報に接して感じたことを書き留めてみた。
浅利さんの場合、まずあげたいのは「演劇だけで経済的に自立する」ことをごく当たり前のこととしてかざし、かつ、実現したことだろう。
経済的に自立するとは「芝居で飯を食う」ということ。だが、当時は、劇団(員)と言っても、普段は飲食店などでアルバイトをして夜間にけいこ、そして年に数回程度の公演をするというのがほとんどだった。アルバイトか俳優か、どちらが「本業」なのか分からないという現実は現在もそれほど変わってはいないと思う。
ところで、芝居を本業にするには、ほぼ専業的にけいこをして、毎週か毎月、定期公演があり、その公演もかなりの数の観客で埋めることを意味する。そのためには、芝居の意義を認めてもらい、相当数のファンにチケットを買ってもらう必要があるのだ。
浅利氏本人に聞いたところによると、例えば地方都市でミュージカルを公演する場合、まず、浅利氏や俳優陣がキャンペーンで出かけていって各企業や団体を軒並み訪ね、トップの人たちに対して公演のプレゼンをし、チケットを1枚1枚買ってもらったという。その時、大事なことは招待券を一切出さないということ。舞台の意義や面白さを訴え、実際にお金を出して応援してくれるファンを一人ずつ増やして行ったことが今日につながったという話だった。芸術家だと言っても、「チケットを売る」というハングリー精神が必要だという主張に大いに共感したのだった。
第2は、劇団四季として、見応えのあるオリジナル(和製)ミュージカルを創作し、成功させたことだ。
日本で年間、どのくらいの数のミュージカルが創作されているだろうか。おそらく何百、何千という単位だろう。私自身、何度も制作会見に出る機会があり、その都度、レベルの高い作品を期待したが、舞台を見てがっかりしたケースがほとんどだった。鳴り物入りで巨額の資金や人材をつぎ込んで作っても、なかなか再演にかなう作品が生まれないというのが、日本の創作ミュージカル界の現状なのだ。
そんな状況にあって唯一、作品としても素晴らしく、お薦めできたのが劇団四季の作品だ。「夢から醒めた夢」「ユタと不思議な仲間たち」、昭和の歴史3部作「李香蘭」「南十字星」「異国の丘」は、ミュージカルの命ともいうべき曲が美しく、また、説得力のある舞台だった。外国の作品と比べても遜色のない作品が創れたのは、大型ミュージカルの作成過程に通じ、実力のあるミュージカル歌手を多く輩出してきた劇団四季だからかも知れない。
第3は、ミュージカルだけでなく、ストレートプレイ(芝居)にも情熱を燃やしていたことだ。劇団の発足がそもそもフランス戯曲のジロドゥやアヌイ作品をするためだったという。ミュージカルの上演が軌道にのると、なじみのないストレートプレイは上演しにくいものだが、積極的に芝居をアピールしていた。
劇団四季の上演作品を思い出すままに上げると、シェークスピア作品の「ハムレット」や現代演劇の「エクウス」や「M(エム)バタフライ」「スルース」などでは見る度に刺激を受けた。そしてジロドゥ作品の「永遠の処女テッサ」「間奏曲」や「トロイ戦争は起こらない」、アヌイ作品の「ひばり」や「アンチゴーヌ」など。いずれも演劇史上に残る名作と聞いたが、なかなか上演されない作品ばかりで、貴重な舞台を拝見できたと思う。
「ミュージカルもストレートプレイも好きになってほしい」という強いメッセージを本気になって伝えようとした人生だったと思う。

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