工芸の部
 工芸出品作品総数  
 工芸応募者数    
 審 査 員 
 入 賞 作 品    
63点
63人
鈴木雅也氏・中井貞次氏  

山崎 昭氏

以下のとおり
(敬称略)
【総評】(中井 貞次)
 「地方の時代」と云われて久しい。とくに工芸分野においては、この言葉に意味深いものを感ぜずにはおられません。即ち、工芸の形成にとって、その背景にある風土が果たす役割は極めて大きいものがあります。滋賀県には霊峰比叡と琵琶湖という自然、文化風土があります。その恵まれたバックボーンに支えられ、培われた固有の工芸に将来に向う新しい展開を望みたいわけです。

 滋賀県展には64回にも及ぶ伝統があり、工芸部門の応募作品にある種の期待をもって鑑審査に臨みましたが、応募作品にいささか活気がないように感じました。それは長く続けられてきた県展の已む無き現象なのでしょうか。そこには応募者の固定によるマンネリ化、若い人達の不参画という影響が考えられます。何とか展覧会のもつ魅力をとり戻すべく、活性化に努めていただきたいと思います。

 64回展の応募作品の約7割が陶磁、約2割が染織、あとの1割が漆、人形、ガラス、木工等でした。これを見ても分かるように、信楽という地場をかかえる県展にとっては当然のことですが、その中にあって評価すべきは、信楽からの若い人達の積極的な応募があったことです。それ等の作品には技術的な未熟さはあったとしても、何かを創り出そうとする強い造形意思と情熱が込められていて頼もしく感じました。また、陶磁や漆の受賞作に見られる県展としての水準の高さは、今後、若い作家への波及効果をもたらすのではないでしょうか。

 平面の応募作品は例年に比べ少なく残念でしたが、受賞作のキルティングの作品は、スケールの大きさの中に、繊細な感性が息づき好感がもてました。 工芸制作にとって何が大切かと云えば、各自の表現技術によって、特定の素材とどのように向い合い、何を創り出すかというコンセプトです。また、工芸作品は他の美術分野と異なって、私達の日常生活空間にかかわるもので、ひいては滋賀県の産業の一端を担い、その発展に貢献し得るものであって欲しいのです。

【選評】
● 芸術文化祭賞
[作品評]
動きのある柔らかいフォルムに、上部のツヤ消し釉から下部の深い光沢のある美しい濃緑色への変化ある釉が良く調和し、作者の感性が良く出た秀作である。
                 (山ア 昭)
「流跡」 杉村 大樹
● 特選
○滋賀県美術協会賞
[作品評]
 大海のうねりを思わす形に螺鈿(らでん)にて波涛を描いている。螺鈿は貝の殻を板状や粉末にして作品に文様を施す漆芸の装飾技法のひとつ。この作品では青味の貝の粉末を微妙に蒔きぼかして、深味と奥行きのある面を創り出している。力強さ深み旋律のある労作である。
            (鈴木 雅也)
「流 耀」 舟越 一生
● 特選
○NHK大津放送局長賞
[作品評]
 手ビネリにより山容を思わせるフォルムに山ハダを思わせる巧みなヒダが良くマッチし、薄くかかった灰釉と良く焼き締まった火色が対象的で若々しさを表出。これからが期待される作である。
                                          (山ア 昭)
「山紫 水明」 千原 賀津喜
● 特選
○朝日新聞社賞
[作品評]
 優しい波の動きに閃めく水面を表した作品である。うすい銀板を文様に切り漆ぬりの面に貼り漆を塗り重ねて研ぎ出す漆芸の加飾技法を平文と言う。作者は銀板をちいさな円型に切り漆面に貼り漆を塗り重ね研ぎ出して波の輝きを表現している。形は小川に架る小橋をイメージか、静かな精微さが漂う作品である。 
                        (鈴木 雅也)
「暫 照」 藤井 收
● 特選
[作品評]
 大画面に奏でられる調べは、湖面に果てしなく繰り広げられます。
 各部分に工夫されたキルティングによる技術効果が、絹素材の持つ光沢の美しさを抽き出し、独自のイメージの世界を見事に創出させた力作です。 
             (中井 貞次)

「アダージョ」 齊藤 多恵子
● 佳作
「春近し」  宇部 裕子
「暁の光」 洞 勇同
◆平面の部
◆立体の部
◆書の部