山は誰のもの? - びわ湖芸術文化財団 地域創造部

 

 里山歩きが趣味で、グループで県内の低山を気ままに歩いている。山のニュースが気になり、いつも考え込んでいる。
 一つは、本誌144号「一等三角点の山と私」で山本紀美子さんが書いていた、シーズンオフの箱館山スキー場(高島市)で通行を拒否されたことだ。
 昨秋、山本さんらが登山するとスキー場全体にぐるりと防獣ネットが張られていて、最高点に行こうとネットをくぐったところ、スキー場管理会社の社員に「私有地だから」と断られた。箱館山は近年、夏のユリ園が盛況で観光拠点になっている。だが、ユリ園は終わっており、麓からスキー場に至るゴンドラも休止中だった。「ユリ園開催中だったら当然、入園料を支払います。これまでハイキングに利用していた登山道を『私有地』だといって締め出すのはどうでしょうか」と山本さんは憤った。
 同じことを筆者も7月中旬に湖北の県境の山で体験した。
 滋賀県最北端の栃ノ木峠から、すぐ近くの標高751・78mの三等三角点を目指したときのことである。ひと気のないスキー場に脇から入り、側端の道路を通って山頂を目指した。しかし「無断侵入」を目ざとく見つけた係員が「休園中だから入れない」。私たちは「三角点まで往復するだけ」と説明、理解を得て登り続けていると、中腹で再び、別の係員に今度は警告を受けた。「勝手に入り込んで、遭難をされるとスキー場としても困る」という。このため、三角点を極めたらすぐUターンして下山を知らせる旨、約束して山頂に向かった。
 ところが、肝心の三角点が見当たらないのだ。頂上付近は造成されて平坦な草原になっていて、リフトの終点にもなっている。みんなで手分けして三角点を捜したが見つからなかった。やむを得ず三角点をあきらめて下山したが、麓に下りると、遭難を心配してくれたはずの係員らは誰も事務所におらず、拍子抜けの気分になった。
 滋賀県にかかわらず、山間部の大部分は私有地であるようだ。登る側にもマナーが求められ、ゴミなどは持ち帰るし、マツタケシーズンには「入山禁止」を尊重してきた。だが、今まで利用できたところを、私有地だからと「囲い込む」のはどうだろうか。山はみんなのもの。ぜひ、考え直してほしい。

 もう一つは、湖西・赤坂山(823・8m)で起きた大阪の小学生の遭難である。
 正確には赤坂山南方の峠「寒風」で。マキノ高原から寒風に上り、そこから稜線伝いに赤坂山に登って下山するコースに挑んでいた小学6年生の一行の最後尾にいた二人が寒風付近で行方不明となり、翌朝、下山してきたところを無事、保護されたニュースだ。
 赤坂山はとても登りやすい素敵な山でこれまでに5回は登っている。昨年、寒風を通る同じコースを登っていたので余計に気になったのだ。稜線は中央分水嶺高島トレイルの踏み込まれた道だが、仲間に聞くと迷いやすいところが1カ所あり、二人は「近道をする」といって、そこで行方不明になったらしい。
 大阪の学校は毎年、マキノで林間学校を開き、登山を実施していた。団体登山にも相当、注意を払っていたと思われるが、それでも「ルール違反」が起きてしまったようだ。小学生だし、無事に戻ったのでよかったが、新聞各紙の報道を見ても「ルール違反」を適切に指摘したケースはなかったように思う。
 どんなに魅力的な山でも「ルール」を無視すれば安全はありえない。もし今回のようなケースで山の事故を過度にとらえ、足が遠ざかるようであれば、くれぐれも残念だ。

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