旧聞 駅と電話でつながらないこと - びわ湖芸術文化財団 地域創造部

 旧聞ではあるが、「湖国と文化」の第148号「私の琵琶湖環状線」特集号の取材で初めてJR各駅の電話番号が公開されていないことを知った。いや、薄々そうではないかと思ってはいたのだが、取材で最寄り駅に連絡しようとして無理だとわかり、事態の深刻さに気付いた訳だ。電話帳などには一切載っていない。駅に連絡したいときにはどうするのか。その場合は、JR西日本のお客様センターに連絡して教えてもらうか、そこの指示に従うことになるようだ。
 それについては文中でも書いたのだが、「今、なぜ話題にするか」といえば、その後、人と話をする毎にそれが話題になったからだ。「駅に直接電話ができなくて苦労しました」と切り出すと、「そうなんですよ、私も……」と返ってきたからだ。JRを利用する人はみんな、そうした経験を一度はしているようだ。
 ある人の場合は、JR草津駅内のある場所に忘れ物をした。お客様センターに連絡すると、遠くの府県にある遺失物係りを紹介され、届け出がないため、改めてセンターから駅に手配して探してもらったが結局、出てこなかったという。「忘れた場所もわかっているんです。駅に直接、電話できれば駅員さんにすぐ見に行ってもらえたのに」と悔しそうだった。
 幹線の琵琶湖線(東海道線)はまだしも、風でよく電車が止まる湖西線や草津駅で接続する草津線などローカル線は本数が少ないため、問い合わせは必須事項だ。「最終電車が出るのか、とか、台風や大雨のときに電車が走っているのか。そんな情報がなかなかわかりません。以前なら気軽に最寄駅に聞けたのに」。そんな声をいろんな人から聞いた。「早朝など微妙な時間に大阪で仕事があるときは、ホテルを予約して自衛しています」との声も聞いた。
 ところで冒頭で旧聞と書いたのは、いつ、お客様センターが駅の電話番号に取って変わったか、定かでないからだ。移行当時、新聞やTVで話題になっていたかも知れないが、記憶にないのが残念だ。民間大企業の合理化ではあるが、民間とはいえ、市民の足を担う公共企業であるから、国鉄時代からの新聞各社やTV各社が加盟する記者クラブ「青灯クラブ」で、記者会見や資料配布がされたのだろうか。あったとしても、「赤字対策のため、合理化は当然」と記者に受け止められたのかも知れない。
 駅は、ただ電車が通り、乗客が乗り降りする場だけでなく、町にとっては玄関であり、人やモノが行き交う大事な情報発信の基地でもある。また、駅員も切符販売や安全な運行だけでなく、案内や問い合わせに応じて情報を伝えることも大きな使命だと思うのだ。合理化や時代の波で駅もどんどん変わっていくことはある一面で仕方がないことであるが、合理化の名で利用者とのパイプをどんどん切り捨てていくのはどうなのだろうかと思う。

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